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肥満・ダイエットと漢方薬

肥満はさまざまな病気の原因になります。

ここでは肥満やダイエットについて食生活や漢方の視点を中心にまとめています。

目次

肥満とは

肥満とは体脂肪が脂肪が蓄積している状態です。

「肥満」とは、体重が多いだけではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。肥満は、糖尿病や脂質異常症・高血圧症・心血管疾患などの生活習慣病をはじめとして数多くの疾患のもととなるため、健康づくりにおいて肥満の予防・対策は重要な位置づけを持ちます。

厚生労働省 e-ヘルスネットより

とくに内臓に脂肪が多くついている内蔵脂肪型肥満のほうが、下半身や腰回りに脂肪が多くつく皮下脂肪型肥満よりも生活習慣病を発症しやすいと言われています。

同じBMIでもどこに脂肪がついているかで健康への危険性は大きく異なってきます。筋肉の内側の腹腔内に脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の人は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを発症する確率が高くなります。一方、腰まわりや太ももなど下半身を中心に皮下脂肪が多く溜まっているものの内臓脂肪は少ない「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」の人は、こうした症状はあまりみられません。

厚生労働省 e-ヘルスネットより

漢方では痰湿がたまっている状態

漢方では、肥満は痰湿(たんしつ)がたまっている状態と考えます。

痰湿とは、体内にたまった悪さをする水のことで、浮腫みの原因となるほか、皮下脂肪やコレステロール・中性脂肪などの脂分も痰湿の一つと考えます。

漢方の視点で考える肥満の原因

漢方の視点で肥満について考えてみるといくつかの原因に分けられます。

食毒:慢性食中毒

食毒は、一貫堂医学(漢方流派の一つ)で用いられた考え方で、食べすぎによる慢性的な食中毒を指します。

美食家に多い傾向にあります。

食毒の人は、若い時に虫垂炎、壮年期以降は、動脈硬化や糖尿病、腎疾患などが起こりやすいとされます。

現代のような飽食、欧米食による高たんぱく高カロリーの食事であふれ、運動不足も重なり、この食毒に侵されている人が増えています。

食べすぎ、運動不足は食毒につながる

気滞、食毒:ストレスによる食べすぎ

ストレスは漢方では気の流れを滞らせる(気滞)原因になります。

仕事などのストレスによって気滞となり、胃腸の働きが異常になって食べすぎてしまうことがあります。

つまり気滞から食毒・痰湿の発生につながっています。

ストレスによるやけ食いも食毒につながる

脾気虚弱:消化不良・代謝不良

上記2つは食べすぎによるものでしたが、逆にあまり食べないのに体重がなかなか落ちにくい方がいらっしゃいます。

五臓の一つ、脾(ひ)は胃腸機能のことを指し、水分代謝にも深く関係します。

脾が弱る脾気虚弱(ひききょじゃく)と呼ばれる状態では、消化機能が弱く、また余計な水(痰湿)がたまりやすくなり肥満の原因となります。

また、脾気虚弱の方は、汗をコントロールする気が不足しやすいので、少し動いただけで汗をかきやすいことが多いです。

脾気虚弱の原因は、生まれつきによるもののや冷たいもの、油こいものの食べすぎによるものが多いです。

冷たいもの、油こいものの食べすぎは脾をいためやすい

血瘀:血の巡りが悪い

血瘀(けつお)は血の巡りが悪い状態のことです。

血の巡りが悪くなった部分を瘀血(おけつ)といい、瘀血と痰湿が一緒に体内にとどまることで肥満と関係することがあります。

血瘀の方は、舌の裏の静脈が膨らんだり、生理痛がひどかったりします。

瘀血は、気滞や痰湿など様々な要因から発生します。

痰湿と瘀血が同時発生することも多い

腎虚

五臓六腑の一つ、腎は現代医学でいう腎臓や生殖器系を含み、水分代謝に深い関係があります。

腎の働きは年齢とともに衰えやすく、腎の機能が落ちると、全身に余計な水がたまりむくんだ状態になります。

腎虚は、生まれつきの方、高齢の方に出やすいです。そのため高齢者の肥満は腎虚も関係することがあります。

年齢とともに腎が弱りやすい(腎虚)

肥満を解消するには

食毒の方の多くが、食べ過ぎ・運動不足によるものです。

食事

量や内容を見直す

食事量を抑えたり、肉類・油ものばかりではなく野菜や海藻など食べるなど内容も見直すと良いでしょう。

1日3回食べる

マウスでの実験ですが、朝食を抜くと逆に太りやすくなるという報告があります。1日3回食事をとることを意識しましょう。

食事の順番を変える

食事の順番を変えるだけで、普通に食べた人と比較し半年で1.5㎏減量した報告があります。

野菜(食物繊維)→肉や魚など(タンパク質)の順に食べ、野菜、肉・魚を食べ始めてから5分たったら炭水化物を摂るというものです。

この方法は比較的続けやすそうです。

運動

エネルギーを消費したり筋肉をつけて基礎代謝を上げることも有効です。

・有酸素運動:ウォーキング、サイクリング、水泳など息をしながら運動を行う。(例30分間のウォーキングを週に3日、余裕が出てきたら日数や時間を増やしていく)

・レジスタンス運動(筋トレ):腕立て、スクワット等。2-3日に一回程度、週あたり2-3回行う。始める前に怪我防止のためストレッチをする。

自分が取り組みやすいものであればどのような方法でも良いです。

近年、減量(体重や脂肪の減少)の効果に対する運動種目・強度・時間の影響について、多くの研究成果が得られています。結論からいいますと、個人にとってより多くのエネルギー消費量を確保できる運動であれば、どのような方法でも良いと考えられます。その点、レジスタンス運動よりも有酸素性運動を中心に行った方がエネルギー消費量を確保するには良いでしょう。ただし有酸素性運動に該当するものであれば、ウォーキング・自転車エルゴメータ・ジョギング・水泳など、いずれの種目でも効果に大きな差はありません。

厚生労働省 e-ヘルスネットより

なお、まとめて運動しなくても、時間を分割して運動しても同じ成果が得られるようです。

20分以上運動しないと脂肪が燃焼しないというようなことを耳にする方がいると思いますが、これまでの研究成果から、1日に30分の運動を1回行っても10分の運動を3回行っても、両者の減量効果に差のないことが認められています。つまり同じ運動であれば、その効果は総運動時間に対応するといえます。

厚生労働省 e-ヘルスネットより

ただし体を痛めている方は無理しないようにしましょう。

胃腸機能を整える

もともと脾気虚弱(胃腸機能が弱い)の方や、食生活などで胃腸が弱ってしまった方は、エネルギーの消費がうまくできないためなかなか体重が落ちにくい傾向にあります。

そのため、脾(胃腸)の嫌がる冷たいもの油こいものなるべく控えたり、乳酸菌など善玉菌を継続的に摂取して腸内環境を整えてあげると良いでしょう。

また便秘も肥満の原因となります。毎日トイレに行き排便習慣をつけると良いでしょう。

漢方薬で体質の改善を促す

体質に合わせた漢方薬を併用することで、体の中から肥満解消をサポートできる可能性があります。

肥満に使われる漢方薬の例

下記①~③の漢方薬は「肥満症」の適応が記載されている漢方薬で、医療現場でもよく使われています。

①防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

食毒を治療する漢方薬です。

一般的に、暑がりでがっしりとした太鼓腹で便秘がちタイプの方が多いです。

代謝を促進する麻黄が入っていたり、排便を促す大黄を含みます。

②防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

脾気虚弱の汗かきの方で、いわゆる水太りタイプにおすすめです。

防已黄耆湯に含まれる防已(ぼうい)は余計な水をとり、黄耆(おうぎ)は気を補って発汗を正常化し、白朮が胃腸の働きを助けます。

③大柴胡湯(だいさいことう)

ストレス(気滞)に食毒が合わさった方におすすめです。

大柴胡湯に含まれる柴胡と枳実は気の巡りを良くしストレスを和らげ、また枳実は食事の消化促進に関わります。さらに大黄が含まれており排便を促します。

その他

これら3つの漢方薬に当てはまらない方や、どれかよくわからない方は、瘀血や気滞など複雑な体質となっている可能性があります。

この場合は、体質に合わせて漢方薬を使うことで改善がみられる可能性があります。

参考書籍:
いかに弁証論治するか(東洋学術出版社)
漢方一貫堂医学(医道の日本社)

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