肥満・ダイエットに使う漢方薬③:大柴胡湯

「なかなか継続できない。ついつい食べてしまう」

ダイエットは食事制限が重要ですが、このように悩んでいるあなたはストレスが原因かもしれません。

現代社会はカロリーの高い食事とストレスで満ちています。食事制限がうまくいかない場合、ストレスにも注意が必要です。

大柴胡湯はストレスを和らげ排泄を促進しダイエットをサポートします。

目次

ストレス太りで便秘がちの方におすすめ

大柴胡湯をダイエットに使う時のポイントは、「ストレス太り」「便秘がち」です。

漢方ではストレスは胃腸の機能と深い関係があるとされています。

ストレスは胃腸の働きを乱し、過剰な食欲を引きおこしたり逆に食欲が落ちたりすることがあります。

大柴胡湯は次の働きのような働きをします:

ストレスを緩和し胃腸の働きを整え食欲を正常化する

・食べ過ぎによって体の中にたまった余分なものを外に排泄(排便)する

大柴胡湯が合うタイプの特徴

次のうち、とくに1~5が当てはまれば大柴胡湯が合っている可能性が高いです。

大柴胡湯タイプの特徴
  1. 便秘がち
  2. 体格はがっちりしておりお腹が張っている
  3. イライラしやすい
  4. ストレスでたくさん食べてしまう
  5. 脇腹が張る・痛む・苦しい
  6. 舌の苔が黄色
  7. 口の中が苦い
  8. 肌が色黒

※すべての症状が当てはまるわけではありません

大柴胡湯の適応症(効能・効果)

当薬局で取り扱っている満量処方のモリ カンポールン(大柴胡湯)の適応症を例にあげてみます。

体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの次の諸症:

胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症

モリカンポールン(大柴胡湯)添付文書より

肥満症だけでなく、ストレスに関連する胃炎や神経症などの症状にも効果があることが分かります。

また「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく」の部分は、漢方の言葉で胸脇苦満(きょうきょうくまん)と言い、ストレスが続いている方によくみられる特徴的な症状です。

具体的には、わき腹からみぞおちにかけて違和感を感じたり、手で抑えると抵抗がある状態です。

防風通聖散ではどっちがおすすめ?

防風通聖散もがっちりタイプ、便秘がちの方に使います。

さらに、このような症状に加えて胸脇苦満やストレスによる食欲異常が関係している方は大柴胡湯の方が合っていることが多いです。

防風通聖散と大柴胡湯の使い分け
  • 防風通聖散
    食べ過ぎで、余計なものがたくさんたまっている状態。がっちり脂肪太りで便秘がち
  • 大柴胡湯
    上記の症状に加え、ストレスが強い場合。

飲まない方が良い人

大柴胡湯は大黄や枳実といった、外への排泄を促す生薬が含まれています。

そのため次のような方は避ける方が無難です。

・下痢、軟便傾向のある人

・胃腸虚弱な人

・著しく体力が弱っている人

副作用

体質に合った漢方薬を選べば副作用はほとんどありませんが、次の成分を含む漢方薬で副作用が報告されています。

甘草:偽アルドステロン症

甘草は長期間あるいは多めに摂取すると偽アルドステロン症という症状が出ることがあります。

「手足のだるさ」、「しびれ」、「つっぱり感」、「こわばり」、「力が抜ける感じ」、「こむら返り」、「筋肉痛」などの症状が特徴です。

黄芩(おうごん):間質性肺炎

ごくまれに重篤な副作用である間質性肺炎の報告があります。「咳」や「発熱」などが出ます。

ただし、黄芩を含まない漢方薬でも間質性肺炎が報告されているので、未解明の部分があります。

大柴胡湯もこれらの成分を含むため、万一上記のような症状があればいったん中止し、処方元の医師や薬剤師に相談しましょう。

市販のおすすめ大柴胡湯

市販の大柴胡湯の剤型には主に
・エキス剤(粉薬)
・煎じ薬
の2つがあります。

より効果の高いものを求める方は煎じ薬がおすすめですが、エキス剤でも充分効果がありますので通常はまずは続けやすいエキス剤が良いでしょう。

満量処方エキス剤(粉薬)

ドラッグストアやネットで売られている市販の漢方薬は、病院で処方してもらう医療用漢方薬よりも、成分量が少なく作られていることが多いです。

こちらの大杉製薬のエキス剤は、医療用医薬品と全く同じ成分量・内容で作られている満量処方のためおすすめです。

煎じ薬

本来の漢方薬の形、煎じ薬です。
毎日煎じる必要があるため手間がかかりますが、エキス剤よりも効果は良いとされています。

よくある質問

大柴胡湯が効果が出るまでどの程度かかりますか?

効果がでるまでの時間は人によります。

だだし、漢方薬が体質に合っていれば2週間~1ヶ月程度で何らかの変化が見られることが多いです。

たとえば大柴胡湯であれば、便通が良くなったり過食が減ったりといった変化が体重変化の前に見られることがあります。

このような変化が見られたら、しばらく続けて様子見てください。

防風通聖散と一緒に飲んでも大丈夫?

一般の方が、ご自身で大柴胡湯と防風通聖散を併用することはおすすめしません。

漢方薬は体質に合わせて内容を変えるものだからです。

また、一緒に飲むことで大黄といった成分が重なり、下痢などの副作用が起こりやすくなることがあります。

なお、両者を一緒に処方する漢方専門の病院や漢方薬局もありますが、この場合も、体質や量をきちんと考慮した上で出しています。

防已黄耆湯と一緒に飲んでも大丈夫?

大柴胡湯と防已黄耆湯の併用はおすすめしません。

防已黄耆湯と大柴胡湯は、そもそも適応となる体質が異なるためです。

一緒に飲む時点で、体質の判定を間違えている可能性があります。

防已黄耆湯は胃腸がもともと弱くて汗かきのいわゆる「虚証」、大柴胡湯は胃腸は丈夫で体格の良いいわゆる「実証」に使います。

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