薬膳・漢方の資格を選ぶ時に確認しておきたいこと

「漢方や薬膳に興味があり、勉強をしながらついでに資格も取りたい。でもどの資格がいいか教えてほしい」
「薬膳の資格ってどれも似たような名前ばかりで違いがわからない」

このように悩む方は多いようです。

お客様や私の知り合いからも、おすすめの資格や勉強法について質問を受けることがあります。

しかし色々な団体からたくさん資格が出されており、たしかにどれがいいのか誰でも迷ってしまいそうです。

今回は、国際中医師・国際薬膳師の資格を持つ管理薬剤師が、薬膳・漢方の資格を選ぶときの考え方について書いてみました。

少しでも参考になれば幸いです。

目次

資格を取る目的を確認

まず、薬膳資格、漢方資格はすべて民間資格です。
国の法律で定められる国家資格はありません。

漢方薬を処方するには医師免許、漢方薬を売るには薬剤師免許や登録販売者といった国家資格が必要ですが、その他の薬膳・漢方関係の仕事をするにあたって、とくに資格が無くても法律上働くことは可能です。

もちろん薬膳・漢方の資格をとる意味がないというわけではなく、どの資格もそうですが何のために資格を取りたいのか目的を確認しておくことが大切です。

この目的によってどのレベルまで知識を求めるかなどが変わってきます。

資格を取る目的の例
  • 漢方、薬膳に興味があり勉強するきっかけとして
  • 生活に役立てて健康に過ごしたい
  • 就職を有利に進めたい
  • 会社から求められている
  • 臨床や飲食などの仕事に役立てたい

薬膳か漢方か

薬膳か漢方かは資格を取る目的によって選ぶのが基本です。

医療関係者や漢方薬に興味がある方は漢方の資格、食品・飲食関係者や日々の食事を気を付けたい方は薬膳がおすすめです。
なかには漢方と薬膳の資格を両方とれるものもあります。

どちらにするか迷った場合は理解しやすい中医学がベースになっている薬膳系がおすすめです。

なぜなら、薬膳の基本は中医学(漢方)の基本と通じているからです。

医療関係者や漢方薬に興味がある…漢方の資格
食品・飲食関係者や日々の食事を気を付けたい…薬膳の資格
どれがいいのか分からない…薬膳の資格

薬膳と漢方の違い

薬膳も漢方も基本的な考え方は同じです。

もともと昔は食材も薬も区別はなく、とくに薬効の強いものが漢方薬の材料として使われるようになりました。

薬膳は中医学理論を使って食材を分類し、体調を整えるために体質に合わせて食材を選びます。
食材のかわりに生薬(薬草など)を使えば漢方になります。
生薬(漢方薬)を選ぶまでの過程は薬膳と同じです。

ただしこれはあくまで中医学で考えた場合です。
漢方を勉強する際には中医学と日本漢方の考え方も入ってくることが多いため、体質の判断や選び方の説明が異なる場合があります。
(中医学と日本漢方の違いについては下の方で説明しています)

薬膳・漢方の資格を選ぶときにチェックしておきたいポイント

資格を選ぶ時は、下記のような点もチェックしておくといいです。

学習スタイル

学習スタイルは主に2種類あります。

  1. オンライン(eラーニング・zoomなど)・
    通信教育(テキスト・DVD)
  2. 通学

オンライン・通信教育

オンライン・通信教育は、時間の制約がない諸費用が安いことが特徴です。
ただし一人のため、モチベーションの維持や計画性が必要になってきます。

通学

通学は、自宅と異なる環境でほかの受講者と一緒に講義を受けるため、記憶の定着やモチベーションアップにつながりやすいこと、疑問点があればその場ですぐに質問できることなどが特徴です。
ただし時間の制約や通学の手間、費用が高い傾向にあることがデメリットです。

なお薬膳の上位の資格では調理実習のために通学が必須の講座もあります。

通信教育会社か民間スクールか

資格を取得する方法はおおまかに次のどちらかになります。

  1. 通信教育会社が行う講座を受けて受験する
  2. 民間スクールの講座を受けて受験する

(一部、受験のみ可能な資格や受講だけで取れる資格もあります)

通信教育会社

通信教育会社はオンラインや通信教育を専門に行っている会社です。
ユーキャンなどが有名です。

ほとんどは資格の認定を別の機関が行い、講座だけを通信教育会社が受け持つ形となっています。

基本的に初心者向けの内容になっています。

最初からスクールに通うのは抵抗があるという方や、薬膳・漢方の考え方に触れてみたいという方は通信教育会社の講座がおすすめです。

民間スクール

漢方・薬膳の民間スクールは、初級者から上級者までのコースが用意されています。
基本的に費用は割高です。

代表的なスクールは
薬膳:本草薬膳学院、日本中医食養学会、国際薬膳学院、日本中医学院、薬膳アカデミアなど
漢方:上海中医薬大学附属日本校、日本中医学院、薬日本堂漢方スクール、日本中医薬学院など
があります。

多くのスクールは、通学に加え、オンラインや通信教育も行っており遠方でも受講できるようになっています。
ただし薬膳実習のように通学が必須になることもあります。

また国際資格と呼ばれる上級向けの資格を取得するためには、発行元の中国の各機関と提携しているスクールの講座を受講しテストに合格する必要があります。

将来的に薬膳や漢方(中医学)の高い知識を望む方は最初から民間スクールに入るのも手です。

・通信教育会社の講座は費用を抑えながら手軽に基本を学ぶことができる
・上級資格を取得するにはスクールでの受講が必要

取得までの時間や費用

内容の難しいものほど時間や費用といったコストがかかる傾向にあります。

通信講座の初級者向けの資格は、数週間~4ヶ月程で取得でき、費用は2~5万円程です。

薬膳や中医学のスクールが実施する中・上級者向けの講座を受ける場合は、数か月~3年程度、費用は数十万円以上かかることが多いです。

費用には受講料・受験料だけでなく、資格によっては認定費用・会員入会費用や更新費用がかかるものもあります。
会員には特典が付いていることが多いですが自分に必要なものかよく見てから選ぶ必要があります。
また通学では交通費も発生するためスクールの場所選びも重要な要素になります。

取得時間の目安費用の目安
初級者向け
(通信教育)
数週間~4ヶ月2~5万円
中・上級者向け
(民間スクール)
数か月~3年数十万円以上

漢方を勉強するときに意識しておくこと

とくに漢方の資格を勉強する場合ですが、意識しておくといいことがあります。

それは漢方は
・中国で発展した「中医学
・日本で発展した「日本漢方
の2つが国内で現在主流となっていることです。

本来「漢方」は日本漢方のことを指し、中医学とは別の意味で使い分けます。
しかし最近は区別なく使われることも多く、漢方を勉強するときの混乱の原因になることがあります。

そのため漢方を勉強する際、今勉強している内容が日本漢方なのか中医学なのか意識しておくことをおすすめします。

中医学と日本漢方の特徴

中医学

中医学は理論的に理解しやすいのが特徴です。

中国で学生が大学で学べるよう体系的なカリキュラムが成立しており、陰陽五行説をもとに物事の原因と結果を結びつけて説明されているためです。
現代のロジカルシンキングと同じです。
慣れない難しい言葉が並んでいように見えますが考えると理解できるようになっています。

なお薬膳は中医学が基本となっています
現在、薬膳が広まっているのはこうした中医学の理解のしやすさがあるからと思われます。

ただし中国と日本では風土や環境が異なるので、そのまま中医学の考えを日本で当てはめるのは難しいケースが少なくありません(日本では手に入りにくい食材や生薬を使っているなど)。
なかには日本人に合わせた薬膳資格もありますが基本的に中医学の知識が必要です。

日本漢方

日本漢方は、日本人に合わせて実用的な部分だけが残され発展してきたため、実践的ですぐに使えるものが多いことが特徴です。

たとえば証(体質や病状を表すもの)がそのまま処方名となっている方証相対や、虚・実・中間といった体力の考え方は漢方薬を選ぶときにとても参考になります。

ただし日本漢方は、理論的に理解しづらいものも多いです。
様々な流派が混在しているうえ、体系的・理論的に知識が整理されていないためです。
結果的に丸暗記が必要になり、漢方って難しいと思われる要因の一つになっています。

よって中医学と日本漢方のどちらがいいか迷った場合は、まず中医学を勉強してから日本漢方に触れるほうが挫折しにくいと思います。

漢方資格は中医学+日本漢方を組み合わせているものが多い

中には国際中医師のような中医学のみを問われる資格もありますが、漢方資格を勉強する場合、中医学理論(陰陽五行説、五臓六腑)をベースに実践的な日本漢方を組み合わせて理解しやすいように作られているものが多いようです。

  • 漢方には中医学と日本漢方がある
  • 薬膳は中医学理論がベース
  • 中医学は理論的に理解しやすいため、まず中医学を学んでから日本漢方を学ぶのが本来おすすめ
  • 漢方資格の勉強内容は中医学+日本漢方のことが多い

まとめ

  • 何のために薬膳・漢方の資格を取るか目的を確認
  • 目的に合わせて資格のレベルや内容を選ぶ
  • 薬膳か漢方か迷ったら中医学ベースの薬膳がおすすめ
  • 漢方を学ぶ時は中医学と日本漢方の違いを意識しておくと混乱しにくい

(参考)薬膳・漢方の資格

薬膳・漢方の資格は別のページでまとめています。

【薬膳の資格】

【漢方の資格】

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