処方された漢方薬と市販の漢方薬の違い

漢方薬には、病院で処方されるものと同じ名前の市販薬がドラッグストアなどで販売されているものがあります。

これらの違いは何でしょうか?

それは「含まれる成分量」と「法律による分類」の違いです。

目次

含まれる成分量の違い

違いを説明する前に、本記事では、一般的に使われているエキス漢方製剤(粉・錠剤)について解説します。

また、市販で購入できる漢方薬は「一般用漢方薬」または「一般用」、医師に処方された漢方薬は「医療用漢方薬」または「医療用」と呼ぶことにします。

一般用漢方薬は医療用漢方薬よりも成分量が少ない

通常、一般用漢方薬は医療用漢方薬の50%~80%程の成分量で作られています。

もし手元に一般用漢方薬があれば箱や説明書に書かれている成分欄をご覧になってみてください。

メーカーによっては記載されていないものもありますが、成分欄には

「〇〇〇エキス(3/4量)

のように書かれています。

「(3/4量)」とは満量処方(後ほど説明)の4分の3(75%)の成分量で作っているという意味です。

医療用漢方薬は基本的に満量処方で作れていますので、この場合、医療用の4分の3の量が入っていると理解しておいて問題ありません。

例)ツムラ葛根湯の成分量(医療用 対 一般用)

ツムラ葛根湯の医療用と一般用を例に比較してみます。

添付文書(説明書)に書かれている分量はそれぞれ次の通りです。

【医療用】ツムラ葛根湯

ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)の分量


【一般用】ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A

ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒Aの分量

まとめると

スクロールできます
1日
用量
使用している生薬量
葛根麻黄大棗桂皮芍薬甘草生姜
医療用7.54.03.03.02.02.02.02.0
一般用5.02.682.012.011.341.341.341.34
(すべてg)


このように1日に服用する成分量は、ツムラ葛根湯では、一般用が医療用の3分の2となっています。

ちなみにツムラの場合、製剤1gあたりの生薬の使用量と添加物は医療用も一般用も同じです。

つまり、ツムラの一般用漢方薬と医療用漢方薬はどちらも作り方は同じで、パッケージの内容量を変えているだけと考えられます。

ただしメーカーによっては、医療用と一般用で作り方を変えているところもあるため、全てがこのように単純に比較できるわけではありません。

一般用漢方薬の成分量が少ない理由

一般用の成分量を少なくしている理由は、メーカーが効き目よりも安全性を優先しているためです。

この背景には、一般用漢方製剤は自己判断で服用される場合があるため、副作用などのリスクが病院で処方されるよりも高まる可能性があるという点があります。

Q.健康保険でもらえる漢方薬と薬局で売っている漢方薬は同じですか?

A.ツムラの漢方薬(漢方製剤)に含まれる生薬成分は一緒です。健康保険適用の漢方薬(医療用漢方製剤)が医師の診察に基づき選択されるのに対し、薬局で売っている漢方薬(一般用漢方製剤)は、患者さま自身の自由な選択でどなたでも服用可能となっています。ツムラでは、この違いをふまえた上で一般用漢方製剤の安全性をより高めることを考慮し、1日の服用量を調整しております。そのため、服用量が異なる場合がございます。

ツムラホームページ  よくあるご質問より

ただし満量処方は例外

上記のように成分量が少なく調節されているものとは別に、認可されている最大の成分量(≒医療用漢方薬と同じ成分量)で作られている漢方薬があります。

これを「満量処方」といい、箱にも書かれていることもあります。
(満量処方についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)

ただし、ドラッグストアや一般的な薬局のように不特定多数の人が出入りする所では、満量処方の漢方薬は、葛根湯や防風通聖散など種類が限定されている場合がほとんどです。

なお、ミヂカナ薬局では漢方相談薬局の強みを活かし、豊富な種類の満量処方の漢方薬を販売しております。

一覧にない満量処方の漢方薬がございましたら取り寄せられる処方もございますので、お気軽にお問い合せください。

メーカーが違う場合は単純比較が難しいことがある

これまで、一般用漢方薬よりも医療用漢方薬の方が成分量が少ないと説明してきましたが、メーカーが違う場合は単純比較が難しいケースがあります。

同じ漢方薬名でも生薬の配分量がメーカーによって異なることがあるためです。

たとえば下の表は、葛根湯についてツムラ医療用クラシエ一般用の成分量を比較したものです。

スクロールできます
葛根麻黄大棗桂皮芍薬甘草生姜
ツムラ(医療用)4332222
クラシエ(一般用)
(葛根湯エキス顆粒S
6332.252.251.50.75
ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)と
葛根湯エキス顆粒Sクラシエ(一般用)の比較(g)

クラシエの葛根湯は葛根の割合が多く作られており、クラシエ一般用(3/4量)であってもツムラ医療用より1.5倍多く葛根が含まれていることになります。

葛根は肩や首の筋肉をほぐす働きがあり、病院からもらったツムラの葛根湯よりも、市販のクラシエの葛根湯の方が肩こりが良くなったという話も聞いたことがあります。

このように、同じ漢方薬名でもメーカーが違えば生薬の配分量が異なるケースがあるため、医療用漢方と一般用漢方を単純に比較することは難しいです。

法律による分類の違い

ここまで、医療用漢方薬(処方された漢方薬)と一般用漢方薬(市販の漢方薬)の違いは2つあり、1つが「成分量の違い」であると説明してきました。

ここからは、もう1つの「法律による分類の違い」について説明いたします。

漢方薬は大きく3つに分類される

医薬品は、法律では主に4つに分けられ販売規制がされています。

  • 医療用医薬品
  • 薬局製造販売医薬品(薬局製剤)
  • 要指導医薬品
  • 一般用医薬品

(①と②を合わせて「薬局医薬品」と言います)

漢方薬は、③以外のいずれかに該当します。

  • 病院から処方してもらう漢方薬
    ⇒「①医療用医薬品」
  • 漢方薬局で売られている煎じ薬
    ⇒「②薬局製剤販売医薬品」
  • ドラッグストア等で売られている市販の漢方薬
    ⇒「④一般用医薬品」

なお「要指導医薬品」は一部の西洋薬に限られ漢方薬は当てはまりません。

分類により販売方法が異なる

この分類により、誰がどこでどのように販売できるか法律で定められています。

医療用医薬品
  • 原則医師が処方し、薬局で薬剤師が販売(調剤)
  • 処方された医薬品は対面またはオンライン服薬指導により販売
  • インターネット販売不可
薬局製造販売医薬品(薬局製剤)
  • 都道府県知事の許可を得て薬局で薬剤師が薬を製造し販売する
  • 薬局製剤の漢方薬のほとんどは煎じ薬(他に丸剤・軟膏)
  • インターネット販売
一般用医薬品
  • 第1・2・3類に分かれる(漢方薬は第2、3類のみ)
  • 薬局・薬店(ドラッグストア)で薬剤師または登録販売者が販売
  • インターネット販売

表にするとこんな感じです。(2023年現在)

スクロールできます
薬局医薬品要指導
医薬品
一般用医薬品
医療用医薬品薬局製剤第1類第2類第3類
漢方薬エキス剤煎じ薬なしなしエキス剤
多くが低濃度
販売施設病院
薬局(調剤/零売)
薬局(漢方薬局)薬局・薬店・ドラッグストア
販売者薬剤師薬剤師
登録販売者
ネット
販売
××
参考書籍:「カラー図解 よくわかる薬機法 医薬品販売制度編」編集ドーモ

一般用、医療用どちらがおすすめ?

目安として次のように考えておくといいでしょう。

一般用漢方薬(市販)がおすすめの方
  • すぐに漢方薬が欲しい
  • とりあえず試してみたい
医療用漢方薬がおすすめの方
  • 時間がかかっても、なるべく効き目の良い漢方薬を使いたい
  • 経済的な理由で医療保険を使いたい

漢方薬局の選択肢もあります

本格的な漢方薬を求める方には、漢方薬局がおすすめです。

以下、漢方薬局の特徴です。

  • 漢方薬に精通した薬剤師によるカウンセリングを受けられる
  • 医療用漢方薬よりも豊富な種類の一般用漢方薬を扱っている
  • 煎じ薬を扱っているところも多い
  • 症状や体質に合わせたオリジナル漢方薬を調合してもらえる

(ミヂカナ薬局の取扱商品も参考になさってください)

自分に合った漢方薬を選ぶことが大前提

長々と説明してきましたが、最も重要なのは自分に合った漢方薬を選ぶことです。

体質に合わない医療用漢方薬を服用するよりも、体質に合った一般用漢方薬を服用する方が効果的です。

医療用漢方薬を飲んでもあまり体調変化が無い方、漢方薬選びに迷われている方は、お気軽にご相談下さい。

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