満量処方とは

「この〇〇漢方薬は満量処方!」などテレビCMなどで見かけることはありませんか?

葛根湯や防風通聖散等の箱に書かれてあるのを見かけた方もいらっしゃるかもしれません。

満量処方についてまとめてみました。

目次

満量処方とは

「日本薬局方」または「一般用漢方製剤製造販売承認基準」の最大量を配合している市販の漢方薬のこと

満量処方とは、「日本薬局方」または「一般用漢方製剤製造販売承認基準」に載っている分量の最大量を使って作られた市販の漢方薬のことです。

両方に同じ漢方名が掲載されている場合、日本薬局方が優先されます。日本薬局方とは国が作った薬の作り方辞典のようなものです。ただし多くの漢方薬は一般用漢方製剤製造販売承認基準のみに掲載されています。

満量処方は、基本的に医療用漢方薬と同じ分量になることが多いです。つまり病院で使われている漢方薬とほぼ同じ効果の漢方薬を市販でも手に入れることができるという事です。

満量処方の漢方薬は、この写真のように箱に満量処方と書かれていることが多いです。

商品写真:葛根湯エキス顆粒Aクラシエ [10包]
葛根湯エキス顆粒Aクラシエ

満量処方で販売されている市販漢方薬は少ない

効果の高い満量処方ですが、一般的に市販の漢方薬はあえて量を減らして作られていることがほとんどです。

市販薬は不特定多数の人が買うため、効果よりも健康被害(副作用)のリスクを減らすことをメーカーが優先しているのが理由です。

ではどんな漢方薬が満量処方が販売されてるかというと、多くの人に使われていながら大きな健康被害の問題が起こっておらず、かつメーカー間の競争も激しい商品になります。たとえば葛根湯や防風通聖散、麻黄湯は良く使われている漢方薬のため満量処方をドラッグストアで見かけることが多いです。

なお例外的に老舗漢方メーカーの大杉製薬株式会社のような一部のメーカーは、ほとんどの市販薬を満量処方で作っています。

ただし一般のドラッグストアでは販売されていません。

当店で扱っている満量処方漢方薬の例

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満量処方ではない漢方薬の表記

機会があれば、ドラッグストアに置かれている漢方薬の箱をご覧ください。

メーカーによっては書いていないところがありますが、成分・分量のところに1/2量や2/3量と書いています。

1/2量というのは満量処方の1/2量(半分)の生薬を使って作っていますという意味です。

たとえば代表的な漢方薬メーカーであるツムラの市販漢方薬は1/2量で売られています。

ツムラ漢方補中益気湯エキス顆粒(第2類医薬品)添付文書より

満量処方に比べて成分量が半分ということは、病院で処方してもらう漢方薬の半分の量しか入っていないということになり、効果もそれだけ出にくい可能性があります。

一般用漢方製剤製造販売承認基準とは

漢方メーカーが一般用漢方薬をスムーズに製造販売できるようにするためのもの

「一般用漢方製剤製造販売承認基準」は、厚生労働省が、市販薬としてふさわしいと認めた漢方薬を生薬量や効能効果とともに一覧にまとめたものです。
(漢方薬と生薬の違いについてはこちら

長い名前なので分けて解説すると、

一般用漢方製剤=市販の漢方薬を

製造・販売=各漢方メーカーが作り、売る

承認基準=承認を得るための基準

ということです。

基準に従って薬を作れば、申請するメーカーは研究開発コストが抑えられ、審査する側の国や都道府県も確認項目を格段に減らすことができるため、スムーズに商品を市場に出すことが可能になります。

漢方メーカーはこの基準に基づいて漢方薬を作っています。

「一般用漢方製剤製造販売承認基準」 は厚生労働省から通知として出されています↓
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000160072.pdf

一般用漢方製剤製造販売承認基準に掲載されている漢方薬は294処方

この基準が作られた背景に、医療費を抑制するためにセルフメディケーション*を国として推進する動きがあります。

比較的副作用が少ないうえに、未病(病気予防)の概念のある漢方薬はまさにセルフメディケーションにぴったりではないか、ということで掲載されている漢方薬がどんどん増えています。

一般用漢方製剤製造販売承認基準に掲載されている処方数は、2007年までは210処方だったのが、現在は294処方になっています。(2022年12月現在)

*セルフメディケーションとは、軽い症状であれば自分で薬等を使って手当てをすることです。

満量処方の具体例:安中散

具体的に満量処方の例を紹介します。

一般用漢方製剤製造販売承認基準には、漢方薬を構成する生薬と分量が書かれています。

たとえば、最初に出てくる安中散(あんちゅうさん)という漢方薬を見てみると次のように書かれています。


〔成分・分量〕に、「桂皮 3-5、延胡索 3-4、牡蛎 3-4、茴香 1.5-2、縮砂 1-2、甘草1-2、良姜 0.5-1」とあるのが、安中散を構成する生薬と分量の基準です。

桂皮3-5は、桂皮を3~5gの範囲で使って作ってください、という事です。

満量処方では最大量を使うので桂皮を5g使います。同じように他の生薬も各分量の最大量を使っています。

優先度は日本薬局方が上

ただし最初に触れた通り、全ての生薬を最大量で作れるわけではなく、日本薬局方に載っている漢方薬があれば、日本薬局方の比率通りにつくらなければなりません。

たとえば葛根湯は、日本薬局方に次の4パターンの生薬量の組み合わせが記載されており、いずれかの比率を守らないといけません。

第十八改正日本薬局方 医薬品各条生薬より

一方で、一般用漢方製剤製造販売承認基準の葛根湯の〔成分・分量〕は葛根4-8、生姜1-1.5とあります。

一般用漢方製剤製造販売承認基準 より

しかし、葛根8gを選択した場合は生姜1.5gを使えるわけではなく、日本薬局方の1)にしたがい、生姜は1gを使う必要があります。

ただし日本薬局方に載っている漢方エキス剤は40種類弱しかありませんので、ほとんどが一般用漢方製剤製造販売承認基準をもとにして作られているようです。

以上、満量処方についてまとめてみました。

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