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桂皮、シナモン、ニッキの違い

桂皮(ケイヒ)は、桂枝湯や葛根湯など様々な漢方薬に使われています。

お客様に漢方薬を説明する際、味などをイメージしやすいので「こちらの漢方薬はシナモンを含んでいます」と説明することも多いのですが、実は厳密には桂皮とシナモンには違いがあります。

また八つ橋の名前に付けられている使われるニッキもシナモンと同じような扱いを受けていますがこちらも違いがあります。

どのような違いかというと、基原植物(元となる植物)や採れる部位の違いがあります。

ここでは桂皮・シナモン・ニッキの違いについてまとめてみたいと思います。

目次

桂皮・シナモン・ニッキは同じ植物の仲間から取れる

桂皮・シナモン・ニッキのもととなる植物は、いずれもクスノキ科のニッケイ属の植物です。

同属の植物ですが完全に同じではありませんので微妙に違いも生まれます。

桂皮=カシア(シナニッケイ、トンキンニッケイ)の樹皮

桂皮(カシアの樹皮)を刻んだもの

漢方薬で使われる「桂皮(ケイヒ)」は、「Cinnamomum cassia J. Presl (Lauraceae)の樹皮または周皮の一部を除いた樹皮」と日本薬局方に定められています。

ケイヒ
Cinnamon Bark
CINNAMOMI CORTEX
桂皮
本品はCinnamomum cassia J. Presl (Lauraceae)の樹皮
又は周皮の一部を除いた樹皮である.

第十八改正日本薬局方より

「Cassia」という言葉が入っている通り、桂皮はカシアと呼ばれる植物の樹皮です。

カシアは日本名でシナニッケイ、トンキンニッケイ、ケイとも呼ばれます。中国では肉桂や桂木と呼びます。

桂皮は辛味と甘味を持ち精油成分が豊富です。

国内で使われる桂皮のほとんどは、中国やベトナムで栽培されたものを輸入して使用しています。

中国産は産地により名前が付けられ、良く使われる中国産の桂皮は広南桂皮(かんなんけいひ)です。

ベトナムの桂皮は、中国産に比べると精油量を豊富に含み香りや辛味が強いとされています(生薬メーカーの情報)。そのため当店はベトナム桂皮を採用しています。

なお桂皮は食品としても流通しており、その香りの強さからカレーなどのスパイスに使われることもあります。

当店でも食品の桂皮を販売しています。

桂皮=カシア(シナニッケイ、トンキンニッケイ、ケイ)
(中国では肉桂と呼ぶ)

シナモン=セイロンニッケイの樹皮

シナモンスティック(セイロンニッケイ)

「シナモン」は、セイロンニッケイ(Cinnamomi verum)の樹皮です。

セイロンニッケイはスリランカ、インド、インドネシアが主な産地です。

上品な香りと爽快な甘味があり、辛味はほとんどないため、紅茶の香りづけやお菓子作り等に用いられます。シナモンスティックとして売られているのもたまに見かけます。

ただ実際は、桂皮(カシア)や次に説明するニッキがシナモンとして売られていることが非常に多いです。

シナモン=セイロンニッケイ
ただしカシアやニッケイもシナモンとして扱われることが多い

ニッキ=ニッケイの根皮

ニッキはニッケイ(Cinnamomi sieboldii)という植物の根の皮です。「日本桂皮」「肉桂」とも呼ばれます。

桂皮とシナモンと異なり、樹皮の皮ではなく根の皮を使います。

ニッケイは関東以西~沖縄で自生しており、和歌山や高知、鹿児島などでは生薬の生産が行われていましたが、最近は生産が減っています。

昭和20年代には、ニッケイの根の細い部分を集めた「ニッキ」が駄菓子屋で売られ、かむと甘辛いような味と強い香りがただよい、子供たちに喜ばれたそうです。

またニッケイ根皮を乾燥させて粉末にしたものはお菓子や料理に使われます。

京都の八つ橋はニッキ味が有名ですが、ある八つ橋の成分を見ると桂皮末とあり、正確には桂皮≠ニッキですので現代もニッキを使っているかどうか定かではありません。

八つ橋

ニッキ=ニッケイ(日本桂皮・肉桂)の根皮

中国の肉桂と日本の肉桂は異なる

生薬は中国と日本で同じ呼び方でも、違うものを指していることが度々あります。

肉桂もその一つで、上で説明してきた通り、肉桂は、中国では桂皮(カシアの樹皮)、日本ではニッケイという植物を指します。

「肉桂」と書かれていたら中国の肉桂か日本の肉桂か区別が必要です。

肉桂について

中国→桂皮

日本→ニッケイ

まとめ

  • 桂皮、シナモン、ニッキは同属の植物から取れるが全く同じではない
  • 漢方薬に使われる桂皮はカシアの樹皮。
  • 製菓や紅茶に利用されるシナモンは、セイロンニッケイの樹皮。ただし桂皮やニッキもシナモンとして使われることが良くある。
  • 八つ橋等に使われてきたニッキは、日本のニッケイの根皮。
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桂皮シナモンニッキ
基原植物の学名Cinnnamomum
cassia
Cinnnamomum
verum
Cinnnamomum
sieboldii
基原植物名カシア
=シナニッケイ
=トンキンニッケイ
=ケイ
=肉桂(中国)
セイロンニッケイ
(カシアやニッケイが
使われることも多い)
ニッケイ
=日本桂皮
=肉桂(日本)
味や香り甘味と辛味強い上品な香りと甘味甘辛い
使用部位樹皮樹皮根皮
漢方薬に使用××
製菓や料理に使用
カレーなど

紅茶・お菓子

お菓子(八つ橋?)
生産地中国・ベトナムスリランカ、インド
インドネシア
日本

以上、桂皮・シナモン・ニッキの違いについてまとめてみました。

【参考文献】
日本薬草全書、パートナー生薬学
日本漢方生薬製剤協会ホームページ

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