当帰湯と当帰芍薬散の違い

当帰湯と当帰芍薬散。

どちらも「当帰」という名前が使われていますが中身の構成や効き目はかなり違います。

当帰湯と当帰芍薬散の違い

当帰湯:体を温め、冷えからくる腹痛・胸痛・腹部膨満感を改善する。気血を補う。

当帰芍薬散:血を補い水分代謝をよくする。

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共通している生薬は2つ

当帰湯と当帰芍薬散は、両者に共通している生薬は「当帰」と「芍薬」だけです。

全体を見るとかなり構成が異なります。

当帰湯と当帰芍薬散の生薬構成

当帰湯は冷えの改善と体力回復に重点を置いている

当帰湯は、80%が温性の生薬で占められ(上図赤字のもの)、桂皮・乾姜・山椒はとくに熱性が強く、冷えを改善する働きが強い漢方薬と言うことが分かります。

さらに、気を補う黄耆・人参、血を補う当帰・芍薬も入っており、当帰湯は冷えに加えて気力体力ともに弱っている方に使います。

また、厚朴・半夏は、気を巡らせ胃気の上逆を鎮めるため、膨満感や吐き気にも対応しています。

腹痛だけでなく、胸痛や背部痛にも使われるのも当帰芍薬散との違いです。

当帰芍薬散は、血を補い、水分代謝を改善する

当帰芍薬散は、血を補う生薬と水分代謝を改善する生薬が3種類ずつ入っています。

温める生薬だけでなく、熱を冷ます生薬(芍薬・沢瀉)も入っており、冷えに特化した薬というわけではありません。

もともと当帰芍薬散は女性の腹痛のために作られた漢方薬で、主薬(メインとなる生薬)は芍薬です。

芍薬は、筋肉の緊張をほぐす作用があるため、生理痛のような下腹部痛にも良く使われています。

効能・効果の比較

当帰湯と当帰芍薬散、それぞれの効能・効果(薬局製剤の場合)はそれぞれ次の通りとなっています。

当帰湯の効能・効果

体力中等度以下で、背中に冷感があり、腹部膨満感や腹痛・胸背部痛のあるものの次の諸症:胸痛、腹痛、胃炎

当帰芍薬散の効能・効果

体力虚弱で、冷え症で貸血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

当帰芍薬散も冷え症に使うと書かれていますが、熱を冷ます涼性の芍薬の割合が最も多く、直接体を温めるというよりも、血を補って血行を良くすることにより体を温めるものと考えられます。

当帰湯が合う方

当帰湯は、冷えによって症状が強くなる腹痛や胸痛があり、さらに気虚(疲労倦怠など)や血虚(乾燥肌、不眠など)といった、気力体力の弱っている方に良いです。

単に冷えからくる腹痛だけの場合には、大建中湯の方が良いでしょう。

人参湯も冷え症の腹痛に使いますが、日頃から冷えると下痢をしやすい方に向いています。

当帰芍薬散が合う方

当帰芍薬散は、血虚症状に加え、水分が体に停滞している方に合います。

たとえば次のような症状が見られます。

  • 血虚症状:月経量が少ない、顔色が悪い、舌の色が薄い
  • 水分代謝:むくみ、体が重たい、軟便傾向、舌がぼてっとしている

その他、生理痛などの腹痛にも使われます。

まとめ
  • 当帰湯と当帰芍薬散が共通している生薬は「当帰」と「芍薬」のみ
  • 全体の生薬構成がかなり違うため、使い方も大きく異なる
  • 当帰湯:体を温め、冷えからくる腹痛・胸痛・腹部膨満感を改善する。気血を補う。
  • 当帰芍薬散:血を補い水分代謝をよくする。
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