身近な生薬:神麴(シンキク)

生薬にはこんなものまで使っているの?と驚かされるものがたくさんあります。

その一つに神麴(読み:しんきく。神曲とも書く)という生薬があります。

神麴(しんきく)とは

神麴は、中国では小麦粉と小麦ふすま(麸)に、何種類かの生薬の汁や粉末を加えて発酵させて作ったものです。小麦ふすまとは、小麦の外の皮の部分で英語でブランと言われます。

麹(こうじ)の文字が使われているように、発酵にはコウジカビや酵母菌が絡んでいます。

とくにコウジカビは、食物を分解する酵素をたくさん作りだしてくれる菌です。

代表的な酵素には、デンプンを分解するアミラーゼ(ジアスターゼ)、タンパク質を分解するプロテアーゼ、脂質を分解するリパーゼがあります。

神麴

漢方薬のきぐすり.com(栃本天海堂)より

神麴は消化剤

これらの食物分解酵素を持つため、神麴は消化剤として使われます。

日本漢方では、半夏白朮天麻湯や加味平胃散に配合され、胃腸が虚弱だったり、食べ過ぎによる胃もたれなどに使います。

中国では保和丸という有名な漢方消化剤に配合されています。

身近な似たものに塩麹や味噌など

家庭では、これと似た働きのあるものにコウジカビを利用して作られる塩麹や味噌などがあります。

塩麹や味噌をお肉と一緒に付け込んでおくと、コウジカビが作り出した酵素(プロテアーゼ)の働きで柔らかくなり、旨味成分が増えて美味しくなります。

酵素は熱に弱い

なお酵素はタンパク質のため、60℃以上の加熱でそのほとんどが分解され失活してしまうことが知られています。

そのためか中国では丸剤に使われることが多いようです。

ご自宅でも味噌や塩麹の酵素の直接的な作用を期待するのであれば、なるべく加熱せずに利用するとその消化作用を最大限に活用できるのではないかと思われます。

ただし半夏白朮天麻湯のように、煎じたものでも1/2~1/3程度の酵素活性が残っている報告もあるので、加熱したら絶対に効果が無くなるわけでも無さそうです。

夏目漱石も飲んでいた?

余談ですが、夏目漱石著「吾輩は猫である」の作中に、タカヂアスターゼを猫の主人(漱石)が飲んでいたとあります。

タカヂアスターゼは、高峰博士がコウジカビから抽出した酵素を薬にしたもので、現在も医薬品(新タカヂア錠® 第一三共ヘルスケアなど)として販売されています。

漢方では、その数百年以上前から使われていることに驚きですね。

【参考文献】

浴剤
焙じはとむぎ