むくみと漢方

むくみ。とくに女性で悩んでいる方が多い印象です。中医学の観点からむくみについて解説してみます。 

津液(水)の流れが滞るとむくみが起こる

中医学では、人間の身体は気・血・津液・精の基本物質から構成されていると考えます。このうち津液が水に相当します。津液がスムーズに流れなくなるとむくみが生じます。むくみは別名、水腫とも呼ばれます。

なお西洋医学の関連疾患には、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、急性・慢性腎炎、腎不全、甲状腺機能低下症、摂食不良、悪性腫瘍、原因不明の浮腫などがあります。

その主な原因は肺・脾・腎の失調

五臓の肝・心・脾・肺・腎のうち津液の代謝や輸送に深く関わっているのは肺・脾・腎です。

津液の流れについて説明しますと、飲食物から消化吸収された津液は「脾」の働きにより肺まで送られます。

「肺」の働きにより津液は全身に輸送され、肌や毛髪に潤いをあたえ、一部は汗として排出されます。

さらに肺から輸送された津液の一部は膀胱に行き、「腎」の働きによって尿として排泄されます。

よって脾・肺・腎の働きが失調すると津液の流れが滞り、むくみが起こります。

肺の失調は急性期に起こりやすい

肺は五臓の中で体の一番上に位置し外邪が最初に侵入しやすい臓器です。風邪などの外邪に侵されやすいことから肺は嬌臓(きょうぞう)=きゃしゃな臓と言われています。病気の初期に急にむくみが出る時は、肺の機能が失調によることが多くあります。

むくみはとくに上半身に出やすいです。悪寒、咳、くしゃみなども一緒に出ることがあります。

脾の失調は食生活が大きく関係する

暴飲暴食や水分の摂りすぎは脾が弱り(脾虚)、むくみを生じやすくなります。

また適度な運動は脾の働きを高めてくれますが、運動不足や過労は逆に脾の機能が失調しやすくなります。これは脾は肌肉に合し四肢を主ると言われ、脾が体の肉付きや手足の活動と関連があるためです。

飲食不摂生、運動不足、これは生活習慣病ともいえます。現代人はとくにこの脾虚によるむくみが多いと感じています。

その他、生まれつきによるもの、肺に侵入した病邪が脾まで進入したことが原因のこともあります。

むくみはとくに手足や全身に出やすくなります。夕方になると津液は重力で下の方に行くので足がむくみやすくなります。その他、胃もたれや下痢など脾虚の症状もみられることがあります。

腎の失調は病気の慢性化や加齢により起こりやすい

腎は五臓の中でも最も深い位置にあります。病気が最初から腎に及ぶことは少ないですが、何年も症状が慢性化していると徐々に病邪が内部に入り込み、腎の機能が失調します(久病久腎)。また過労や加齢も腎の失調の原因となることもあります。

むくみはとくに下半身に出やすくなります。腰痛や手足の冷えなどもみられることがあります。

むくみに使う漢方薬

脾・肺・腎に関わる漢方薬が基本となります。

原因 漢方薬の例 主な症状
肺の失調 越婢加朮湯など 顔のむくみ、悪風、発熱、咳、咽痛
脾の失調 五苓散、胃苓湯、啓脾湯など 四肢・全身のむくみ、下痢、だるさ、食欲不振
腎の失調 真武湯、牛車腎気丸など 全身とくに下半身のむくみ、腰痛、手足の冷え、尿量減少

その他、心・肝の失調から起こる瘀血(血の滞り)が原因のこともあり、その場合は活血薬が必要なこともあります。
また慢性化している場合、複数の漢方薬の組み合わせが必要になることが少なくありません。あくまで証(体質や病状)に合わせた漢方薬を選ぶことが大切です。

参考書籍:中医基礎理論(上海科学技術出版社)、中医内科学ポイントブック(東洋学術出版社)、いかに弁証論治するか「疾患別」漢方エキス製剤の運用(東洋学術出版社)

浴剤
焙じはとむぎ