つわりと漢方薬

漢方で全ての症状が改善されるわけではありませんが、ある程度症状を軽減できる可能性があります。つわりでお困りの方は一度漢方も検討されてみてはいかがでしょうか。

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つわりとは

西洋医学では、つわりは妊娠5週目位から妊婦さんの半数以上の方に見られる悪心や嘔吐を伴う症状のことです。通常は12~16週目(3~4ヶ月目)で治まります。

なお妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、つわりの症状がひどくなったれっきとした病気です。基本的に点滴や入院での治療が必要となります。

「つわり」,すなわち,妊娠初期の悪心・嘔吐は半数以上にみられ,体重減少,脱水,電解質異常などを呈する「妊娠悪阻」は全妊婦の 0.5~2% に発症する。妊娠 16 週以降の発症例や妊娠後半まで症状が継続する場合は他疾患の可能性を考慮する

引用:産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

つわり・妊娠悪阻
‥妊娠5週目頃から起こる食欲不振、吐き気、嘔吐などの消化器系の異常のこと。妊娠したことで伴う生理的変化であり、全妊婦の50~80%にみられる。早朝や空腹時に強い症状が出る。通常は妊娠12~16週目頃までに自然に消えるが、個人差が大きく、一度消失しても後期に再発することもある(後期悪阻)。つわりが重症化し、水分が摂れない時や、栄養代謝障害などを引き起こしたものを妊娠悪阻と呼び区別している。すべての妊婦がつわりを発症するわけではなく、つわりの症状が全く現れない妊婦もいる。また、つわりの有無と胎児の状態は無関係である。比較的夜より朝に症状が重くなることが多い。

引用:ドクターズファイル つわり・妊娠悪阻

気が上逆することが原因

中医学の婦人科の教科書によれば、妊娠期に盛んになった衝脈の気が上逆し、胃失和降となるため嘔吐が起こるとされています。

女性には衝脈(しょうみゃく)と任脈(にんみゃく)という女性の生殖機能に深く関連している経絡があり、妊娠すると胎児を養うためにこの2つの経絡に血が流れこみます。

陰陽学説で血は陰になるため、陰が下に集まれば逆の陽の性質を持つ気が上の方に向かおうとします。これを上逆と言います。

正常な胃の気は常に下向きですが気が上逆すると胃の働きが正常に機能せず、つわり・妊娠悪阻等が起こります。

また現代の人は食生活が乱れがちで、湿気の多い日本では基本的に脾胃虚弱(消化機能が弱い)傾向にあります。脾胃虚弱になると代謝能力が低下するため痰湿(悪さをする余計な水分)が体内に溜まりやすくなります。この痰湿が上逆することもつわりの原因となります。

①脾胃虚弱

胃気虚弱によって衝脈の気が上逆しやすい状態のため嘔吐が起こりやすくなります。

②肝胃不和

ストレスやイライラによって生じた肝火が気を一緒に上逆させることで嘔吐が起こります。

③痰湿阻滞

衝脈の気と痰湿が上逆することで嘔吐が起こります。痰湿が生じる背景には脾虚が存在します。

つわりに使う漢方薬の例

脾胃の機能を高める漢方薬をベースに、痰湿の程度によって漢方を加えます。

治法方剤
脾胃虚弱健脾和胃、降逆止嘔香砂六君子湯*
肝胃不和疏肝和胃、降逆止嘔蘇葉黄連湯+半夏・陳皮・竹筎・烏梅
痰湿阻滞化痰除湿、降逆止嘔小半夏加茯苓湯+白朮・砂仁・陳皮

病院では、小半夏加茯苓や半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯などのつわりの適応を持っている漢方薬が使われることがあります。

*香砂六君子湯は、主に漢方薬局で販売されています。当薬局も取扱しております。

妊娠中の漢方薬の服用について

いずれの漢方にも含まれている半夏は、妊娠中は慎重に使用する生薬として書かれている場合があります。ただ、つわりの症状がある間は症状を抑える方に作用が働くので、症状が治まってから中止すれば問題ありません。なお国内の漢方薬が妊娠に悪影響を及ぼしたという報告はありません。

また、つわり時に薬を飲みづらい時は、一度お湯に溶かした漢方を冷やしてから服用すると飲みやすくなることがあります。

Q.妊娠中ですが漢方薬は飲んでも良いですか?

A.漢方製剤が妊娠に関して悪影響を及ぼしたという報告は、現在のところありません。ただし、妊娠中の薬の服用にあたっては、お身体の状態などを考慮した判断が必要となります。遠慮をせず、おかかりの医師にご相談ください。

ツムラ よくあるご質問より

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