腎虚に八味地黄丸

八味地黄丸はCMで見かけたことがある方がいらっしゃるかもしれません。

老化に伴う諸症状やアンチエイジングの漢方薬として紹介されていることが多いです。

ただし体質に合ったものを使わないと効果が出ないばかりか副作用が起こる可能性もあります。

今回は八味地黄丸について解説いたします。

目次

八味地黄丸の名前の由来

八味地黄丸(はちみじおうがん)は名前のとおり、八味(8種類)の生薬から成り立っています。

地黄・山薬・山茱萸・沢瀉・牡丹皮・茯苓・桂皮・附子

その中の地黄(じおう)が主要な働きを担っている主役であることからこの名前が付けられています。

別名、「八味丸」や腎気(腎陽)を補うことから「腎気丸」や「八味腎気丸」、あるいは原典の金匱要略の文字をとって「金匱腎気丸」と呼ばれることもあります。

八味地黄丸は腎を温める

八味地黄丸は「腎」を温めて腎陽を補う働きを持ちます。

中医学用語では温補腎陽(おんほじんよう)と言い、腎陽が不足している「腎陽虚」という状態に使います。

腎について

腎には、「腎精」という生命活動を維持する基本的な物質があり、腎精はさらに腎陰と腎陽という物質面と機能面に分けて考えることができます。

腎陰は体中を潤して栄養を与え、腎陽は体中を温めて各組織の働きを促進します。

腎陰を補う漢方薬の代表例は六味地黄丸です。

八味地黄丸は、この六味地黄丸に桂皮と附子を加えたものです。桂皮・附子は温める働きが強く、腎に帰経するため腎陽を補うのに用いられます。

腎陰・腎陽は互いに影響しあい(陰陽互根)、どちらかが不足すればもう片方も不足してしまうため、腎陽を補う際は腎陰も一緒に補うのが良いとされています。

そのため腎陰を補う六味地黄丸に腎陽を補う生薬を加えて作られています。

よって腎陽虚だけでなく腎陰と腎陽両方不足している人にも使うことができます。

腎が関係するもの
  • 体全体の水液代謝
  • 発育・成長
  • 生殖能力
  • 呼吸(吸い込む息)
  • 骨、歯、骨髄、脳、耳、髪

腎虚は下半身に症状が現れやすい

腎が弱る(腎虚)と下半身に症状が出やすくなります。

腎虚には腎陰虚と腎陽虚があり、八味地黄丸が適応する腎陽虚では、下半身の冷え、腰痛、足の無力感、インポテンツ、疲労、明け方の下痢などが起こります。

さらに膀胱機能が働きにくくなるため、足のむくみ、残尿感なども起こりやすくなります。

舌を見ると歯の型が舌の周りにギザギザがついてぼてっとしており、気血がうまく巡らないため淡い色をしています。

男性が服用するイメージが強いかもしれませんが、症状が当てはまれば男女関係なく使用できます。

なお腎虚の原因は、生まれつきのものもありますが、通常は年齢による腎の衰えです。

その他、過度の疲労、慢性の消耗性疾患、房事過多によっても腎精を消耗してしまい腎虚になります。

八味地黄丸がおすすめの方

・冷え(特に下半身)

・腰痛

・足の無力感

・インポテンツ(性欲低下)

・明け方の下痢

効能効果

体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの次の諸症:
下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ

オースギ八味地黄丸A 添付文書より

副作用

主成分の地黄は胃腸に負担がかかることがあり、胃腸の弱い方はまれに胃もたれ、下痢等を起こす場合があります。

胃腸の弱い方は胃腸の働きを助ける漢方薬と一緒に飲むか、先に胃腸の弱さを漢方薬で改善しておくと安心です。

おすすめの八味地黄丸

こちらの八味地黄丸は医療用(病院で処方される)漢方薬と全く同じ内容で作られているのでおすすめです。

エキス剤

参考書籍:中医臨床のための方剤学、漢方の君臣方剤学

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