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副作用のリスクがある漢方薬・生薬とは?
漢方薬には副作用が無いので安心と思っている方も多いかもしれませんが、漢方薬も薬ですので少なからず副作用が起こる可能性があります。
ここでは漢方薬の副作用について簡単にご紹介します。
副作用とは
副作用とは、医薬品の使用によって起こる本来の目的とは異なる好ましくない反応のことです。
なお本来の目的である反応を主作用と言います。
たとえば、鼻炎の治療のために抗アレルギー剤を飲んだら鼻は止まった(主作用)が、眠気が出てしまうのは副作用です。
漢方薬の主な副作用
漢方薬でどれくらいの頻度で副作用が起こるか明確な数字はありませんが、次の様な副作用が報告されています。
副作用の中で比較的良く見られるもの
比較的良く見られる漢方薬の副作用としては、下痢、胃もたれ、むくみ、動悸、発疹などがあります。
まれに起こる重篤な副作用
まれに重篤な副作用として、間質性肺炎、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症、低カリウム血症、横紋筋融解症などが報告されています。
生薬特有の主な副作用一覧
生薬によって出やすい副作用があります。これらの生薬が漢方薬に入っている場合は以下のような副作用が出ることがあります。
生薬名 | 副作用・症状 | 漢方薬の例 |
---|---|---|
甘草 | 偽アルドステロン症 (脱力感・むくみ・低カリウム血症など) | 多くの漢方薬 |
麻黄 | 動悸・不眠・血圧上昇・発汗過多・消化器症状 | 葛根湯、麻黄湯 |
大黄 | 過量で腹痛・下痢、虚証の人は下痢しやすい | 大黄甘草湯、麻子仁丸 |
附子 | 過量で中毒症状 (吐き気・動悸・冷や汗・不整脈など) | 真武湯 |
人参 | のぼせ・血圧上昇・発疹など | 六君子湯、補中益気湯 |
桂皮 | 発疹・かゆみなど | 桂枝湯、葛根湯、十全大補湯 |
地黄 | 胃痛・吐き気・下痢・発疹など | 八味地黄丸、滋陰降火湯 |
桃仁 | 過量で腹痛・下痢・めまい・嘔吐 | 桂枝茯苓丸、桃核承気湯 |
山梔子 | 腸間膜静脈硬化症(5年以上服用) | 加味逍遙散、黄連解毒湯 |
黄芩 | 間質性肺炎・肝機能障害 | 小柴胡湯、半夏瀉心湯 |
漢方薬で副作用が起こる原因
漢方薬で副作用が起こる原因の多くは、体質に合わない漢方薬を使ったか、摂取量が多かったかのどちらかです。
逆に言えば、体質に合った漢方薬を適量使えば副作用が起こることはあまりないと言えます。
体質に合わない漢方薬を使ったため(誤治)
漢方薬は「証」に合わせて使うことが原則です。
証とはその時の体の病状や体質を表したもので、証に合わない漢方薬を飲むと副作用が起こることがあります。誤治(ごち)とも言います。
小柴胡湯の事例
過去に死亡事例が出て大きく問題となった小柴胡湯による副作用があります。
小柴胡湯は1986年、「小柴胡湯が肝炎に効く」と報告された後に漢方薬に詳しくない医師も処方したため使用率が急速に伸び、葛根湯に代わって使用量が首位になりました。
その後も使用量が増え続け、間質性肺炎の報告が出てくるようになりました。とくに肝炎の薬であるインターフェロンと併用すると発生頻度が高いことが分かり、今では併用禁忌となっています。
間質性肺炎は、空咳や息切れが特徴で、発熱や発疹もみられることがあり難治性の病気で、場合によっては命を落としてしまうこともあります。
この副作用の原因は、証ではなく病名だけで投与したためです。
小柴胡湯は半夏、黄芩といった乾かす生薬の割合が多い漢方薬です。
高齢者や痩せている方のような乾燥タイプ(血虚・陰虚)の人が漫然と使い続けると、陰液の働きが少なくなり相対的に陽が増え熱症状が出やすくなる可能性があります。
その結果、肺の燥熱(肺炎)が起こったと考えられます。
乾燥した日が続くと山火事が起こりやすくなるのと一緒です。
またインターフェロンは副作用で発熱が起こる頻度が高いことから、より間質性肺炎の発生を助長したと考えられます。
本来であれば乾燥タイプの人に小柴胡湯のような漢方薬を長期に使う場合は、別の漢方薬を使うか、四物湯のような潤す漢方薬を併用する必要があったと考えられます。
摂取量が多いため
複数の漢方薬を使う、あるいは食品などに含まれている成分と重なってしまい摂取量が多くなることで副作用が出るケースも考えられます。
たとえば、甘草を多く摂取していると、むくみやしびれ、筋肉痛などを伴う偽アルドステロン症と呼ばれる副作用が出ることがあります。
他には大黄を多く摂取すると下痢を起こしやすくなります。
とくに甘草は多くの漢方薬に使われていたり、食品の甘味付けに使われていたりするので、漢方薬や食品との併用の際は注意が必要です。
アレルギー体質
証に漢方薬が合っているにもかかわらず、アレルギーがある場合は発疹等が出る可能性があります。食物のアレルギーと同じように予測が難しいです。
漢方薬以外による体調変化
たまたま漢方薬を飲んだタイミングでカゼを引いてしまい、悪寒を副作用と勘違いしてしまうというケースも考えられます。これは副作用ではありません。
瞑眩(好転反応)
副作用ではありませんが、副作用とまぎらわしい反応に「瞑眩(めんげん)」と呼ばれるものがあります。
瞑眩とは、病気の回復に向かう前に、予期しない反応(例:下痢・不正出血・発熱・むくみなど)が一時的に出ることです。好転反応とも言われます。
これは、漢方薬の服用により、それまで動いていなかった体内の気・血・津液(水)が突然動かされたり、本来持っている体の力を鼓舞されたりすることによって、一時的に過度な反応が起こるものと考えられます。
当店でも、瞑眩と思われる症状が出た方が何名かいらっしゃいます。
好転反応と副作用の違いを区別するのは難しいと言われていますが、瞑眩は、服用開始後2-3日以内、遅くとも1週間以内に起きやすいと言われています。症状が長く続くようなら副作用の可能性が高いです。
もし不快な症状が出たら場合によっては一時的に量を減らして様子見て、数日以内に治まれば瞑眩であることが多いですが、気になる症状が出る時は購入元に問い合わせをしましょう。
気になる症状が出た時は
服用中に気になる症状が出た場合は、副作用か瞑眩かの判別は難しく、そもそも漢方薬以外の原因の可能性もあります。
そのため自分で判断せず処方元や購入元に早めに確認をしましょう。
以上漢方薬の副作用についてでした。
【参考書籍】
・スキルアップのための漢方薬の服薬指導(南山堂)
・入門漢方医学(南江堂)
・基本がわかる漢方医学講義(羊土社)