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漢方薬との飲み合わせ(併用)に注意が必要なもの
漢方薬と他の薬との飲み合わせについて解説します。
飲み合わせによって起こりうる悪い影響
漢方薬と他の薬を併用した場合に考えられる影響は次のようなものがあります。
・効果が弱くなる
・効果が強く出すぎる
・副作用が出やすくなる
西洋薬との飲み合わせに注意が必要なもの一覧
厚生労働省より併用禁忌・併用注意として注意されているものと、併用は避ける方がいいと考えられるものをピックアップしています。
併用禁忌
小柴胡湯+インターフェロン
インターフェロンは肝炎に使われることの多い医薬品です。
そこに小柴胡湯が肝炎に有効との報告が広まり、急激に肝炎の患者さんに対して使用量が増えました。
その結果、間質性肺炎という重篤な副作用が報告されるようになり死亡例も報告され、この組み合わせは併用禁忌となっています。
併用注意
麻黄製剤との飲み合わせ
麻黄含有製剤、エフェドリン類、モノアミン酵素阻害剤、甲状腺製剤、カテコールアミン製剤(エピネフリンなど)、キサンチン系製剤(テオフィリン、ジプロフィリン)
麻黄には交感神経を興奮させるエフェドリンが含まれており、上記の薬剤と併用すると作用増強により動機や発汗、不眠などがあらわれやすくなります。
甘草を含有する漢方製剤
・ループ利尿薬、チアジド系利尿剤
併用により低カリウム血症があらわれやすくなる可能性があります。
甘草1日2.5g以上含有する漢方製剤の併用注意として記載されています。
・グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤
グリチルリチン酸は甘草の主成分で、西洋薬でも肝機能異常の改善や湿疹・皮膚炎などに使われています。
甘草を含む漢方との併用により偽アルドステロン症があらわれやすくなる可能性があります。
なおグリチルリチン酸は体内から24時間~28時間で代謝されるため、甘草による偽アルドステロン症は漢方薬を中止すれば2日以内に症状は改善すると考えられています。
その他飲み合わせに注意が必要と考えられるもの
大黄や茶葉を含む漢方薬
ビタミンB1、抗生物質、配糖体類(ジゴキシンなど)、エフェドリン、レセルピン、鉄剤、ビタミンB6、イソニアジド、酵素製剤
→タンニンが効果が減弱するおそれがあります。
石膏・竜骨・牡蛎・滑石を含む漢方薬
・テトラサイクリン系、イソニアジド、リン酸コデイン、鉄剤→複合体形成で効果減弱のおそれ
・ジギタリス→石膏・竜骨・牡蛎によるカルシウムで薬効増強のおそれがあります。
膠飴を含む漢方薬
αグルコシダーゼ阻害剤との併用で、未消化の二糖類が増加し腹部膨満感(ガス)などが起こりやすくなるおそれがあります。
麻黄を含む漢方薬
PPI(例:タケプロン)、H2ブロッカー(例:ガスター)などの制酸剤と併用すると、胃内のpHが上昇し、麻黄に含まれるエフェドリンの吸収が増えて麻黄の副作用が起こりやすくなるおそれがあります。
抗生物質、生菌製剤
漢方薬は腸内細菌によって成分が変化し吸収されるものがあり、抗生物質や生菌製剤によって腸内細菌嚢が変化し吸収に影響を与えるおそれがあります。
西洋薬との飲み合わせは不明なものが多い
漢方薬は多種多様な成分を含むため未知な部分が多く、実は漢方薬と西洋薬との相互作用のほとんどが解明されていません。
過去に漢方薬と西洋薬との併用によって有害な事象が起こった事例や、科学的に良くない組み合わせと考えられる併用については、併用禁忌や併用注意となっています。
これらを除き、基本的には大きな問題は無いと考えられているのが現状です。
ただし問題ないと考えられる場合でも、可能であれば漢方薬と西洋薬は多少時間を空けて飲むのが望ましいと思われます。(漢方薬は食前、西洋薬は食後に飲むなど)
漢方薬と漢方薬の併用にも注意
漢方に詳しいところから複数の漢方薬が出されている場合は問題ありませんが、複数の病院にかかりそれぞれから漢方薬をもらったり、市販の漢方薬を併用している場合は注意が必要です。
市販薬は名前からは漢方薬の連想がしにくいものもあるので飲み合わせに注意しておく必要があります。
またとくに注意しておきたい生薬に、大黄・甘草・附子・麻黄があります。
これらの生薬が含まれている漢方薬を重ねて飲むと
・大黄…下痢、腹痛など
・甘草…偽アルドステロン症(しびれ、むくみなど)
・附子…吐き気、動悸、不整脈など
・麻黄…動悸、発汗、不眠、血圧上昇など
が起こりやすくなるため注意が必要です。
飲み合わせが心配な時は購入先や処方元に確認
飲み合わせが心配な時は、購入先や処方元に確認して飲み合わせをチェックしてもらいましょう。
参考書籍:
スキルアップのための漢方薬の服薬指導(南山堂)
薬の相互作用としくみ(日経BP)
改訂5版 漢方業務指針(じほう)