熱中症予防と漢方薬

普段の熱中症予防に漢方薬を加えてみませんか。

熱中症の症状に有効と考えられる漢方薬をご紹介します。

目次

熱中症の症状

症状の重さによって3段階に分けられています。

Ⅰ度(軽度)…めまい・立ちくらみ・生あくび・大量の発汗

Ⅱ度(中等度)…頭痛・嘔吐・倦怠感・集中力や判断力の低下

Ⅲ度(重度)…中枢神経症状(意識障害、けいれん発作など)

このうち現場で対応できるのはⅠ度までで、Ⅱ度以上の場合は病院の受診が必要とされています。

参照:熱中症診療ガイドライン2015

熱中症の予防

・室内ではエアコンをつける。

・屋外では日傘や帽子、無理な外出は控える。

・通気性の良い衣服を着る、保冷剤、氷、冷たいタオルなどで体を冷やす

・こまめに水分・塩分を取る

など

水分吸収の優れる経口補水液もおすすめです。

漢方(中医学)での熱中症とは?

漢方では、熱中症を中暑(ちゅうしょ)と言います。暑さに中る(あたる)と書きます。

中暑では「気津両傷」(気陰両虚とも言う)という証が現れることが多いです。(証(しょう)とは症状や病状を一言で表すもので、漢方薬を選ぶ根拠となります)

気津両傷とは、気(エネルギー)と津液(水分)が同時に不足する状態を表します。

津液だけでなくなぜ気も不足するかと言うと、体の中を巡る津液は気を運んでおり、汗をかくと気も一緒に出て行ってしまうためです。そのため口の渇きだけでなく、体の倦怠感やなども現れます。熱中症分類のⅠ度とⅡ度に相当すると考えられます。

さらに症状が重い痙攣や意識障害(≒熱中症分類のⅢ度)は「熱閉」に相当すると考えられます。

熱中症予防・軽い症状に使える漢方薬

症状が出る前、あるいは初期症状(気津両傷)が出た時に使える漢方薬を2つご紹介します。

2つを一緒に服用することも可能です。

生脈散(しょうみゃくさん)

人参、麦門冬(ばくもんどう)、五味子(ごみし)の3つの生薬で作られています。

人参…気を補う
麦門冬…津液を補う
五味子…汗を止めて津液の流出を防ぐ

これらの構成で気津両傷に対応します。

生脈散という名前は、気と津液が回復すれば脈が生じるところから名づけられています。

酸味を持つ五味子が入っているため、さっぱり飲みやすい漢方です。

【飲み方】

成人(15歳以上)…1日2回 1回1包
8歳以上15歳未満…1日2回 1回1/2包

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)

体の熱を冷ます白虎湯に人参を加えたもので清熱作用が優れています。

大量の汗が出る・強い口の渇きがある・体温が高いなど、より熱症状の強い時はこちらがおすすめです。

白虎加人参湯は5つの生薬から構成されています。

・石膏…体の熱を冷ます
・知母…体の熱を冷ます
・炙甘草…体を潤す
・粳米…体を潤す
・人参…気を補う

清熱しながら津液を回復し元気をつける働きを持ちます。

まとめ

普段の熱中症予防と合わせて漢方薬で熱中症対策をしましょう。

重症度症状漢方での証漢方薬
Ⅰ度(軽度)めまい・立ちくらみ・生あくび・大量の発汗気津両傷生脈散・白虎加人参湯
Ⅱ度(中等度)受診が必要!頭痛・嘔吐・倦怠感・集中力や判断力の低下気津両傷生脈散・白虎加人参湯
Ⅲ度(重度)受診が必要!意識障害・運動障害・けいれん発作熱閉開竅剤(牛黄清心丸等)
目次